医療脱毛で使われるレーザーには、大きく分けてアレキサンドライト・ダイオード・ヤグ(Nd:YAG)の3種類があります。それぞれ「波長」が異なり、得意な毛質・肌質・到達する深さが変わります。色白で太い毛の人、色黒・日焼け肌の人、産毛が気になる人——自分に合う波長はどれか、中立の視点で整理しました。
このページの位置づけ:医療脱毛の機械・比較ガイド:蓄熱式と熱破壊式の違い / 毛周期とメカニズム / 回数の目安 / 痛みと対策 / 医療と美容の違い。
医療脱毛のクリニックを比べていると、「アレキサンドライト」「ダイオード」「ヤグ(Nd:YAG)」といったレーザーの名前を目にします。これらはレーザーの「波長(nm)」の違いを表していて、波長が変わると、得意な毛質・肌質や、皮膚のどの深さまで熱が届くかが変わります。
先に要点をまとめると、3つの波長に絶対的な優劣はありません。色白で太い毛にはアレキサンドライト、幅広い肌質にバランスよく対応するダイオード、色黒・日焼け肌や根深い毛にはヤグといった具合に、それぞれ得意な場面が違います。本記事では、ここでは特定の機種を推すことはせず、3波長の違いと、毛質・肌質に合った選び方をまとめます。
医療脱毛のレーザーは主に3種類。アレキサンドライト(755nm)はメラニンへの吸収が高く、色白の肌で太く濃い毛に反応しやすい定番波長です。ダイオード(808〜940nm)は吸収と深達のバランスがよく、産毛から太い毛まで幅広い肌質に対応しやすい波長で、蓄熱式の機種に多く採用されています。ヤグ(Nd:YAG・1064nm)は波長が長く皮膚の深くまで届き、メラニンへの吸収が低めのため、色黒肌・日焼け肌でも照射しやすく、ヒゲやVIOなど根深い毛にも向くとされます。どの波長が最適かは、肌の色・毛の太さ・部位によって変わります。多くのクリニックは複数波長を搭載・使い分けており、自分の毛質と肌質に合った波長を選べるかが重要です。
出典:ClinicJapan編集部調べ(2026年5月)/参考:Anderson RR, et al. 1983(PMID: 6836297)・Ibrahimi OA, et al. 2011(PMID: 21276162)・日本皮膚科学会脱毛ガイドラインレーザー脱毛は、毛の黒い色素「メラニン」にレーザーの光を吸収させ、その熱で発毛組織の働きを失わせる仕組みです。これは皮膚科レーザー医療の基礎理論である「選択的光熱融解(selective photothermolysis)」に基づいています。標的(メラニン)に吸収されやすい波長を選ぶことで、周囲の組織を傷つけずに毛だけに作用させるという考え方です(Anderson RR, Parrish JA. 1983(PMID: 6836297))。
ここで鍵になるのが波長です。波長が短いほどメラニンへの吸収が高く、皮膚の浅い部分に作用しやすい。逆に波長が長いほどメラニンへの吸収は弱まり、皮膚の深くまで届きやすい。この性質の違いを使い分けるために、医療脱毛では複数の波長が用意されているのです。波長によって毛質・肌質との相性が変わることは、レーザー脱毛のレビューでも整理されています(Ibrahimi OA, et al. 2011(PMID: 21276162))。下の図で、3波長が皮膚のどの深さまで届くかを見てみましょう。
アレキサンドライトは波長755nmで、医療脱毛で最も長く使われてきた定番の波長です。メラニンへの吸収が3波長の中で高く、色白の肌に生えた太く濃い毛にしっかり反応します。施術後の毛の抜け落ちを実感しやすく、効果の手応えを感じやすいのが特徴です。代表的にはジェントルレーズ系などの機種で採用されています。
また、メラニンへの吸収が高い性質を活かし、薄いシミ・くすみなど美肌効果が語られることもあります。一方で、メラニンに強く反応するということは、日焼けした肌や色黒の肌では肌のメラニンにも反応しやすく、火傷や色素沈着のリスクに配慮が必要になるということでもあります。色白で太い毛、という組み合わせに最も力を発揮する波長です。痛みはやや強めに感じられる傾向があり、太い毛が密な部位では麻酔を併用することもあります(痛みと対策)。
ダイオードは808〜940nmの波長で、メラニンへの吸収と皮膚への深達のバランスがよいのが特徴です。アレキより波長が長いぶん深くまで届きやすく、かつメラニンへの吸収も一定程度保たれるため、産毛から太い毛まで、また幅広い肌質に対応しやすい万能型として位置づけられます。
ダイオードは、低出力を連続照射する蓄熱式(SHR方式)の機種に多く採用されています(蓄熱式と熱破壊式の違いはこちらのページで解説)。蓄熱式と組み合わせることで痛みが穏やかになりやすく、メラニン依存度が下がるため、これまで効きにくかった産毛や、やや色のついた肌にもアプローチしやすくなります。メディオスター系・ライトシェア系などが代表的です。「肌質を選ばず幅広く対応したい」というニーズに応えやすい波長といえます。
ヤグ(Nd:YAG)は波長1064nmで、3波長の中で最も長く、皮膚の深くまで届くのが最大の特徴です。波長が長いぶんメラニンへの吸収は弱まり、その結果肌の表面のメラニンに反応しにくく、色黒肌や日焼け肌でも安全に照射しやすいとされます。実際、Nd:YAGレーザーはあらゆる肌タイプの脱毛に使用できると報告されています(Tanzi EL, Alster TS. 2004(PMID: 14692920))。
深く届く性質から、根が深く太い毛、たとえば男性のヒゲやVIOなどにも向いており、硬く根深い毛に悩む方に選ばれることがあります。肌の色が濃い人を対象とした研究でも、波長や照射方式の選択が安全性と効果の両立に関わることが示されています(Dorgham NA, Dorgham DA. 2020(PMID: 31587390))。一方で、メラニンへの吸収が弱いぶん、産毛のような細くメラニンの少ない毛には反応しにくいことがあり、また深く届くことから痛みは強めに感じられる傾向があります。色黒・日焼け肌の方、根深い毛に悩む方にとっては心強い選択肢です(日焼け肌の可否)。
3つの波長の特徴を表で整理します。下表はおおよその傾向で、実際の効果や適応は機種・出力設定や個人の毛質・肌質によって変わります。
| 波長 | アレキサンドライト 755nm | ダイオード 808〜940nm | ヤグ(Nd:YAG) 1064nm |
|---|---|---|---|
| メラニン吸収 | 高い | 中程度 | 低い |
| 到達する深さ | 浅め | 中程度 | 深い |
| 得意な毛 | 色白の太く濃い毛 | 産毛〜太い毛まで幅広く | 根深い・太い毛 |
| 向いている肌 | 色白の肌 | 幅広い肌質 | 色黒・日焼け肌も対応 |
| 痛み | やや強め | 穏やか(蓄熱式に多い) | 強め |
| 代表的な機種 | ジェントルレーズ系 | メディオスター系・ライトシェア系 | ジェントルヤグ系 |
このように、3波長は「メラニン吸収の高さ」と「到達の深さ」がちょうど逆の関係になっています。だからこそ、自分の毛質・肌質に合った波長を選ぶこと、あるいは複数波長を使い分けられるクリニックを選ぶことが大切になります。次の図で、肌色・毛質別にどの波長が向いているかを早見表で確認しましょう。
波長選びは、最終的にはご自身の肌の色と毛の性質で決まります。代表的なケースごとに目安を整理します。いずれも一般的な傾向であり、最終判断は医師の診察に基づいてください。
メラニン吸収の高いアレキサンドライトは、色白の肌に生えた太い毛に最も反応しやすい組み合わせです。抜けの実感を早く得たい方にも向きます。
肌質を選ばず幅広く対応したい、産毛も含めてケアしたいという場合は、バランス型のダイオード(とくに蓄熱式)が選択肢になります。痛みが穏やかな点もメリットです。
肌の色が濃い、日焼けしやすい、あるいは男性のヒゲやVIOのように根深い毛に悩む場合は、深く届きメラニン吸収の穏やかなヤグが向きます。肌の色が濃い人ではメラニンへの吸収を抑えられる長波長が安全性の面でも選ばれます(敏感肌・アトピーの場合)。
波長の話とよく混同されるのが、「蓄熱式・熱破壊式」という照射方式です。これは別の軸の話で、波長が「どの毛・肌に作用しやすいか」を決めるのに対し、方式は「どう熱を届けるか」を決めます。たとえば同じダイオード波長でも、蓄熱式で使えば痛みが穏やかに、熱破壊式で使えば太い毛への即効性が高くなる、といった具合です。両方を理解すると機種選びの基準が明確になります。詳しくは蓄熱式と熱破壊式の違いをあわせてご覧ください。
「○○波長だから必ず効く・必ず安全」という表現には注意:波長はあくまで相性の傾向で、効果や安全性は出力設定・肌質・毛質・施術者の技術によって変わります。必要回数や効果には個人差があり、回数や結果を保証するような表現は実態と合わない場合があります。どの波長でも、毛周期に合わせた複数回の施術が必要な点は共通です(毛周期とメカニズム)。
波長を軸にクリニックを選ぶときは、次の点を確認すると後悔が少なくなります。
レーザーの波長は、医療脱毛の効果と安全性を支える重要な要素ですが、「どの波長が最強か」を競うものではありません。大切なのは、自分の肌と毛に合った波長を、信頼できる医師のもとで選べるかです。気になる波長があれば、自分の肌色・毛質との相性をカウンセリングで率直に相談してみてください。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療に代わるものではありません。どの波長が自分に向くかは、肌色・毛質を診たうえでの医師の判断が確実です。気になる点はカウンセリングで確かめてみてください。
学術文献(PubMed 収載論文)
公的資料・ガイドライン
学術文献はすべて PubMed(米国国立医学図書館 NLM 運営の学術論文データベース)収載論文を出典としています。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療の代わりとなるものではありません。
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