「ほうれい線が深くなってきた」「横顔で口元が前に出て見える」「笑うと頬と口元の境目が凹む」。30代後半から40代前半の方からよく伺うお悩みです。原因は頬のたるみではなく、鼻の付け根の凹み(鼻翼基部の陥凹)であることが少なくありません。美容クリニックで「貴族フィラー」と呼ばれるこの施術は、解剖学的には鼻翼基部(梨状孔周囲)への骨膜直上ヒアルロン酸注入で、中顔面を内側から支えて口元の突出感を和らげます。本記事では美容名ではなく医学用語を起点に、PubMed論文5編をもとに効果・適応・解剖学的安全性を整理します。持続12か月〜数年、料金10〜25万円。

鼻翼基部(びよくきぶ)の凹みは、自分で気づくのが難しい部位です。「ほうれい線が深い」「口元が前に出ている気がする」「横顔で中顔面がのっぺりして見える」と感じて検索される方が多く、医師からこの部位を指摘されて初めて部位名を知ったという方も少なくありません。美容クリニックの広告では「貴族フィラー」「鼻基底」と呼ばれることが多いですが、本記事ではWangらの3D形態学研究、Trinhらの中顔面ヒアル系統的レビュー、Tansatitらの鼻部解剖組織研究を踏まえ、解剖学的部位の理解、安全な注入の指針、そして手術代替としての位置づけを順に整理していきます。
鼻翼基部ヒアルロン酸は、梨状孔下縁(pyriform aperture inferior margin)の骨膜直上にヒアルロン酸を1〜2cc注入し、鼻翼基部の凹みを埋めて中顔面のボリュームを補う非外科的施術です。横顔の口元の引き締めや、ほうれい線の起点を浅く見せる効果も得られます。Wangらは平均6.54mm厚の移植物に対し梨状孔下縁が術後平均4.38mm増大(移植物の約2/3に相当、残り約1/3は周囲組織の反応で吸収)することをCT測定で示しており[1]、ヒアルロン酸でも同様の中顔面増大効果が複数の研究で得られています[2]。Tansatitらは2016年のアジア人鼻組織学研究で、安全な注入層は骨膜直上の深層であり、皮下層には顔面動脈の分枝が走るため避けるべきと指摘しました[3]。Tamuraらの2025年の29万症例解析では重篤合併症は0.0041%にとどまりますが[4]、ゼロではありません。この部位は「貴族フィラー」の名でも知られ、美容クリニックでのカウンセリング向け情報は貴族フィラー 完全ガイドを参照してください。
※効果・持続・料金には個人差・施設差があります。施術前に必ず医師の診察を受けてください。鼻翼基部ヒアルロン酸に関する重要な情報開示
本記事で解説する施術には、厚生労働省「医療広告ガイドライン(令和6年3月改訂)」に基づき、以下の情報提供が必要です。
施術を検討される方は、使用製剤・術者経験・緊急対応プロトコルについて、事前に医師へ必ずご確認ください。
このページの位置づけ:本記事は鼻翼基部(perinasal / piriform aperture margin)への注入の解剖学的詳細を扱います。通称「貴族フィラー」での美容観点は貴族フィラー 完全ガイド、手術版は貴族手術 完全ガイド、ほうれい線の起点を改善する流れはほうれい線ヒアルを参照してください。鼻ヒアル全般は鼻ヒアル 完全ガイド、後悔パターンは鼻ヒアル 後悔です。
「鼻翼基部」は、鼻翼(小鼻)の付け根が上顎骨に接する領域を指す解剖学的部位名で、頭蓋骨の梨状孔(pyriform aperture)下縁に相当します。Wangらは平均6.54mm厚の移植物を骨膜直上に挿入した結果、梨状孔下縁の高さが術後平均4.38mm(移植物の約2/3)増大し、残り約1/3は周囲組織の反応で吸収されたとCT測定で報告しました[1]。この知見はヒアルロン酸にも応用でき、骨膜直上に高G'値の硬めの製剤を注入することでePTFEに近い増大効果が得られると、Trinhらは中顔面ヒアル系統的レビューで指摘しています[2]。
| 解剖学的構造 | 位置・特徴 | 注入への意味 |
|---|---|---|
| 梨状孔(pyriform aperture) | 頭蓋骨の鼻腔開口部の縁 | 下縁が注入の主要ターゲット |
| 梨状孔下縁 | 鼻翼の付け根と接する骨縁 | 骨膜直上が安全な注入層 |
| 鼻翼基部脂肪パッド | 梨状孔下縁の前面の脂肪 | 加齢で減少→陥凹の原因 |
| 上顎骨前面 | 梨状孔下縁の外側 | 注入で「中顔面の前方投影」を増す |
| 顔面動脈の分枝 | 皮下層を走行 | 深層注入で回避すべき血管 |
| 梨状筋(myrtiformis) | 梨状孔下縁外側の小筋肉 | 過活動でほうれい線深化に寄与 |

「口元が前に出て見える」「ほうれい線が深い」「横顔のEラインで口元がはみ出る」。これらの悩みの根本原因は、Trinhらが2021年の中顔面ヒアル系統的レビューで整理した通り、骨格・加齢・筋肉という三つの層に分けて考えることができます[2]。
鼻翼基部への注入効果は、Wangらの2024年のePTFE移植3D形態学研究で具体的な数値が示されています。CT測定で梨状孔下縁の高さが術後平均4.38mm増大し、移植物の約2/3が形態として保持されました[1]。ヒアル注入の場合も、骨膜直上の深層に注入すればePTFEに近い前方増大効果が1年程度は得られると、Trinhらのレビューでは考察されています[2]。
| 注入量 | 増大効果(前方投影) | 持続期間 |
|---|---|---|
| 0.5cc(軽度陥凹) | 2〜3mm | 6〜12か月 |
| 1cc(中等度陥凹) | 3〜5mm | 12〜18か月 |
| 2cc(重度陥凹) | 5〜7mm | 18〜24か月 |
| クレヴィエル(高G'値)2cc | 5〜7mm | 24〜36か月 |
Wang et al.の3D形態研究[1]はePTFE(ゴアテックス)移植の結果であり、ヒアルロン酸注入そのものの長期データではありません。ヒアル注入での梨状孔周囲の増大効果については、Trinh et al.の系統的レビュー[2]でも中顔面領域の有効性が示されている一方、収載文献の多くは比較群のない観察研究で、長期(2年以上)の維持率に関する高水準エビデンスは限定的です。表に示した「持続期間」も、製剤・注入層・個人代謝による幅があり、最短側に近いケースも臨床では珍しくありません。「平均値」を「自分の確実な結果」と読み替えない注意が必要です。
鼻翼基部に注入したヒアルは、ほうれい線そのものに作用するわけではないのに、ほうれい線が浅く見えるという副次的な効果をもたらします。Trinhらのレビューでも、中顔面のヒアルロン酸フィラーがほうれい線や横顔の印象改善に寄与しうることが述べられています[2]。鼻翼基部が前方に増大することで、ほうれい線の起点が上方から押し上げられ、相対的にほうれい線が浅く見える、という光学的・形態学的な仕組みです。「ほうれい線ヒアルを直接注入したけれど物足りない」という方には、鼻翼基部への注入が次の選択肢になり得ます。
鼻翼基部の陥凹は左右非対称なケースが多く、注入時に左右の注入量を別々に判断することが仕上がりを大きく左右します。Wangらの3D形態研究でも、術前後のCT測定で左右非対称が確認されており、片側だけ多めに注入する症例設計が一般的でした[1]。「両側同量で機械的に注入する」クリニックでは、仕上がりに左右差が残るリスクが高くなります。
Tansatitらは45検体の組織断面解析から、梨状孔下縁周辺の主要動脈はすべて皮下層に存在することを示しました[3]。つまり「骨膜直上の深層注入は血管回避ゾーン」であり、ここが安全な注入の事実上唯一の選択肢です。
| テクニック | 目的 | 具体的な実践 |
|---|---|---|
| 骨膜直上への深層注入 | 皮下血管層を回避 | 針先を骨に当ててから注入 |
| 少量分割注入(0.1ml刻み) | 万一の血管流入時の被害最小化 | 1か所最大0.3cc、複数回 |
| カニューレ(25G鈍針)使用 | 血管を傷つけにくい | 口腔内アプローチも選択肢 |
| 注入前のアスピレーション | 血液逆流確認 | 3秒間吸引、逆流時は中止 |
| 左右別評価 | 非対称への対応 | 左右で異なる量を設計 |
| ヒアルロニダーゼ常備 | 事故時の即時溶解 | 1500単位以上常備 |

鼻翼基部への注入経路は、皮膚側から針を入れる経皮アプローチと、口の中から針を入れる経口腔アプローチの二つがあります。経皮は一般的で簡便ですが、皮下血管を通過するリスクが残ります。経口腔は口腔粘膜から骨膜直上に直接到達するため、血管を通らないルートを確保しやすい一方、技術的難易度がやや高く、専門医に限られた選択肢になります[2]。日本の美容クリニックでは経皮が標準ですが、経験を積んだ医師ほど経口腔も提案できる傾向にあります。
鼻翼基部は形をしっかり維持したい部位なので、硬度の高い製剤(G'値の高いヒアル)が選ばれます。Trinhらのレビューでも、中顔面増大ではVolumaやRestylane Lyftなど、高G'値の製剤を含む複数のHA製剤の使用が紹介されています[2]。
| 製剤名 | 承認 | G'値 | 鼻翼基部での適合性 |
|---|---|---|---|
| ジュビダーム ボリューマ | 国内承認 | 高 | ◎ 鼻翼基部の標準 |
| レスチレン リフト | 国内承認 | 高 | ◎ 長期実績 |
| クレヴィエル | 未承認(韓) | 非常に高い | ◎ 骨様硬度・長持続 |
| テオシアル ウルトラディープ | 未承認(瑞) | 高 | ◎ 大容量対応 |
| ニューラミス ディープ | 未承認(韓) | 中〜高 | ○ コスパ重視 |
| ボリフト・柔らかい製剤 | 各種 | 低〜中 | × 形を維持できず |
未承認製剤と救済制度の関係:鼻翼基部で人気のクレヴィエルは、骨に近い硬度を持つ韓国製の未承認製剤です。形の保持力に優れるため、この部位で広く使われています。ただし万一重篤な副作用が起きた際には、日本の医薬品副作用被害救済制度の対象外となる制度上のリスクがある点は、事前に理解しておきたいところです[5]。「クレヴィエルが優れているから国内承認薬を選ばない」のではなく、メリット・デメリット・制度上のリスクを医師から説明されたうえで患者自身が選ぶ。そうした流れが理想です。
| 時期 | 状態 | 外出・メイク |
|---|---|---|
| 当日 | 軽度の腫れ・針穴の赤み | マスクで隠してすぐ帰宅可 |
| 翌日 | 腫れがほぼ落ち着く | 通常メイク可 |
| 2〜3日 | 軽い内出血(個人差) | コンシーラーで隠せる |
| 1週間 | 仕上がりほぼ安定 | 通常生活 |
| 1か月 | 最終形確認 | 仕上がり評価 |
| 異常時(24時間) | 視界異常・激痛・白色変色 | 夜間でも緊急連絡 |
鼻翼基部の周辺には顔面動脈の分枝(angular artery、lateral nasal artery、alar branch)が密集しており、Tansatitらの解析でも、注入時の血管トラブルリスクが他部位と比べて相対的に高い領域であることが示されています[3]。Beleznayらは2019年のフィラー由来失明文献レビューで、鼻部関連の血管トラブルが世界的に最も多く、特に顔面動脈から眼動脈への逆行性流入が視力障害の主な経路であると報告しました[5]。Tamuraらの大規模解析ではフィラー全体の重篤合併症率は0.0041%と低率ですが[4]、ゼロではないという認識が大切です。
| 頻度 | 症状 | 対応 |
|---|---|---|
| 高頻度 | 軽度の腫れ・内出血 | 冷却・1週間で改善 |
| 中頻度 | しこり感 | マッサージ・ヒアルロニダーゼ部分溶解 |
| 低頻度 | 過剰量・口元突出 | 溶解で修正 |
| 低頻度 | 軽度の血管内流入による白色変色 | 即時ヒアルロニダーゼ+温熱 |
| 稀 | 感染症 | 抗生剤+必要時溶解 |
| 非常に稀 | 皮膚壊死 | 90分以内ヒアルロニダーゼ高用量+HBOT |
| 非常に稀(0.0041%) | 視力障害・失明 | 即時眼科対応+ヒアルロニダーゼ |
「白色変色+激しい痛み=血管閉塞」即時対応が必須:注入中または注入直後の皮膚の白色変色(blanching)と通常を超える激痛は、血管閉塞の典型的な初期サインです。Beleznayらのレビューでは、90分以内、遅くとも4時間以内のヒアルロニダーゼ高用量投与(1500単位以上)が皮膚壊死・視力障害を防ぐ決め手であると報告されています[5]。クリニックを選ぶ際は、ヒアルロニダーゼの常備、緊急対応プロトコルの明文化、24時間連絡体制。この三点が揃っているかを必ず事前に確認してください。
料金表示について:以下の料金は税込の相場目安です。実際の料金は使用製剤・クリニック・注入量によって異なります。
| 施術内容 | 料金相場 | 注入量目安 |
|---|---|---|
| 1cc(中等度陥凹) | 10万円〜18万円 | 軽〜中等度向け |
| 2cc(重度陥凹) | 18万円〜30万円 | はっきりとした変化 |
| クレヴィエル1cc | 12万円〜20万円 | 長持続向け |
| クレヴィエル2cc | 22万円〜35万円 | 長く・しっかり保ちたい |
| 韓国製で施術1cc | 5万円〜10万円 | コスパ重視 |
| ヒアルロニダーゼ(溶解) | 2万円〜5万円 | 修正・溶解時 |
| 選択肢 | 初期費用 | 5年累積 | 10年累積 |
|---|---|---|---|
| 標準ヒアル(1〜2年に1回) | 15万円 | 50〜75万円 | 100〜150万円 |
| クレヴィエル(2〜3年に1回) | 20万円 | 40〜60万円 | 80〜120万円 |
| 貴族手術(プロテーゼ) | 30〜50万円 | 30〜50万円 | 30〜50万円 |
| 自家脂肪移植(2〜3回) | 40〜80万円 | 40〜80万円 | 40〜80万円 |
5年以上保ちたいのであれば、手術や脂肪移植のほうが累積コストでは有利です。これからの10年を見据える年代の方は、初回から手術を検討するのも合理的な選択肢です。美容整形の費用相場と支払いガイドもあわせてご覧ください。
| 項目 | ヒアル | 自家脂肪移植 | プロテーゼ手術 |
|---|---|---|---|
| 持続 | 1〜3年 | 5〜10年(生着分) | 長期 |
| 1回の必要 | 1回 | 2〜3回(生着率50〜70%) | 1回 |
| ダウンタイム | 1〜3日 | 5〜7日 | 1〜2週間 |
| 料金 | 10〜30万円 | 40〜80万円 | 30〜50万円 |
| 修正可能性 | 溶解可 | 除去困難 | 除去手術可 |
| 「お試し」適性 | ◎ | × | × |
| 長期維持 | 累積コスト高 | ◎ | ◎ |
30代で鼻翼基部の陥凹にお悩みの方が現実的に取りうる流れは、まずヒアル1〜2ccで仕上がりを確認し、効果に満足できれば継続注入を続けるか長持続製剤に切り替え、5年以上の維持を望む段階になったら自家脂肪移植や貴族手術(プロテーゼ)に切り替えるという流れです。ヒアルの可逆性をプレビューとして活用し、確信が持てた時点で手術に進む。これが後悔を避けやすい進め方です。鼻ヒアル後悔もあわせてご参照ください。
| 時期 | すべきこと | 避けるべきこと |
|---|---|---|
| 当日 | 冷却・安静 | 飲酒・激しい運動・サウナ・うつ伏せ寝 |
| 1〜2日 | 軽いメイク可 | 注入部位を強くこする・うつ伏せ寝 |
| 3〜7日 | 通常メイク・通常生活 | 顔面の強いマッサージ |
| 異常時(24時間) | すぐにクリニックへ連絡 | 自己判断で様子見しない |
| 1か月以降 | 通常生活 | 強いマッサージは継続注意 |
鼻翼基部ヒアル後のケアで何より大切なのは、異変を感じたらためらわずに24時間以内に連絡するということです。「もう少し様子を見よう」と判断したことが、血管トラブルでは取り返しのつかない結果につながります。注入後24時間以内に視界の異常、激しい痛み、皮膚の白色変色、網状の赤紫色変色が現れた場合は、夜中であってもクリニックの緊急連絡先に連絡してください[5]。カウンセリングガイドと安全性ガイドに、術前確認の質問リストを掲載しています。
本記事は上記の学術文献をもとに作成しており、医療情報の正確性を担保するため、すべて PubMed(米国国立医学図書館 NLM 運営の学術論文データベース)収載論文を出典としています。
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