垂れ鼻(たればな・加齢性の鼻先下垂)
原因・自己診断・改善法を医学論文ベースで解説

鏡を見るたびに、なぜか昔より老けて見える。その原因はしわでもたるみでもなく、鼻先がわずかに下を向いていることにあるかもしれません。加齢で鼻翼軟骨や支持靭帯がゆるみ、笑うとさらに鼻先が下がる「垂れ鼻(たればな)」は、30代後半から40代以降に目立ち始める変化です。本記事では、Wang 2022年・Rohrich 2008年の解剖学研究をもとに、原因・自己診断・ボトックス〜SEGまでの改善法を、医師による術式の選び方とあわせてまとめます。

垂れ鼻 — 加齢による鼻先下垂と印象の変化のメカニズム
広告なし・独立編集
ClinicJapan編集部は、皮膚科専門医によるサイト方針監修のもと、PubMed収載論文・公開された医療文献・厚生労働省「医療広告ガイドライン」をもとに記事を作成・更新しています。本記事は加齢による鼻先下垂(垂れ鼻)に焦点を絞った詳細ガイドで、鼻整形全体については鼻整形 完全ガイド、生まれつきの団子鼻は団子鼻、鼻を高くする総合は鼻を高くする方法でまとめています。編集方針について →

Wang 2022年(PMID 35994354)の中国人成人を対象としたCT定量研究では、加齢に伴い鼻先・鼻筋の軟部組織が肥厚し、鼻唇角が低下する傾向が報告されています[1]。同研究は20〜35歳と65〜80歳の比較であり、何歳から変化が始まるかは特定されていませんが、臨床的には30代後半から鼻先が前下方に少しずつ移動し始めるケースが多く、鏡や自撮りで「なんとなく老けて見える」原因のひとつになっていることが少なくありません。本サイトではこの加齢変化を、「垂れ鼻(たればな)」と呼んでいます(クリニックによっては「老け鼻」「たれ鼻」と表記することもあります)。生まれつきの団子鼻とは別物で、加齢に伴って鼻翼軟骨や鼻先を支える靭帯がゆるみ、鼻先が下を向き、鼻全体が長く見える現象を指します。解剖学的なメカニズム、自己診断のチェックポイント、ボトックスから外科手術までの改善法を、実際の数値とあわせて整理しています。

「垂れ鼻(たればな)」は、加齢で鼻翼軟骨・上外側軟骨・支持靭帯がゆるみ、鼻先が下垂して鼻が長く見える現象です。Wang 2022年のアジア人CT定量研究では、加齢で鼻先・鼻筋の軟部組織が肥厚し、鼻唇角が低下することが報告されています[1]。改善法は症状の段階で変わり、笑ったときだけ鼻先が下がる場合は人中・depressor septi筋へのボトックス(1.5万~4万円・3〜4か月)軽度の常時下垂なら糸(PDO/PCL・8万~25万円・6〜12か月)またはヒアルロン酸(5万~15万円・6〜12か月)中等度〜重度なら鼻中隔延長(SEG・60万~120万円・長期維持)またはdepressor septi切除(15万~40万円・長期維持)が主な選択肢になります[2]。生まれつきの団子鼻とは原因が異なるため、改善法も異なります。

※効果・ダウンタイム・料金には個人差・施設差があります。本文中の学術論文の数値は研究上のデータであり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。施術前に必ず医師の診察を受けてください。
iClinicJapanは厚生労働省の医療広告ガイドラインに沿って記事を作成しています。 詳細はこちら →

垂れ鼻に対する施術についての重要な情報開示

本記事で解説する施術には、厚生労働省「医療広告ガイドライン(令和6年3月改訂)」に基づき、以下の情報提供が必要です。

  1. 自由診療:本記事で取り上げる鼻先下垂改善のためのボトックス・ヒアルロン酸・糸リフト・鼻中隔延長(SEG)・depressor septi切除は、すべて保険適用外の自由診療です。
  2. 未承認医薬品・適応外使用:鼻周囲に使用される一部のボツリヌス毒素製剤(ナボタ®・ボツラックス®等)は、日本の薬機法上の承認を取得しておらず、医師の個人輸入により調達されます。ボトックスビスタ®(承認品)は眉間・目尻のしわのみが承認適応で、人中・鼻周囲への使用は適応外使用(オフラベル使用)に該当します。
  3. 外科的処置:SEG・depressor septi切除は皮膚・粘膜切開を伴う観血的処置です。
  4. 諸外国における安全性情報・救済制度:各施術は国際的に行われている美容医療手技ですが、術後合併症(左右差・知覚異常・修正手術の必要性等)が一定割合で発生します。未承認材料の使用または医師の判断による施術については、日本の医薬品副作用被害救済制度の対象外となる点にご留意ください。

施術を検討される方は、使用製剤・適応範囲・補償体制について事前に医師へ必ずご確認ください。

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鼻整形シリーズ 19/23

垂れ鼻の解剖|なぜ加齢で鼻先が下がるのか

このページの位置づけ:「垂れ鼻」は加齢による鼻先下垂です。一方、生まれつき鼻が長く鼻先が下を向いている場合は魔女鼻(先天的構造)で、別の対策が必要です。鼻先が下がった結果鼻の穴の見え方も変わるケースが多く、鼻柱が下垂して目立つ場合は鼻柱縮小を併用することもあります。横顔の印象を整える際には鷲鼻のハンプ低い鼻根も同時に検討すると、全体のバランスが取りやすくなります。

「垂れ鼻」と呼ばれる加齢変化を理解するには、まず鼻の支持構造を知っておくと分かりやすくなります。鼻は皮膚・軟部組織・軟骨・骨で構成されていて、鼻先を持ち上げているのは「鼻翼軟骨(下外側軟骨)」と「支持靭帯」のセット。これが年齢とともにゆるんでいくと、鼻先が重力の影響で徐々に下がっていきます。鼻整形全体の解剖マップに詳細をまとめています。

垂れ鼻の解剖図 — 加齢で下垂する3つの支持構造(鼻翼軟骨・スクロール領域・depressor septi筋)
支持構造役割加齢で起こる変化
鼻翼軟骨(下外側軟骨/LLC)鼻先を持ち上げる主役軟骨自体が薄くなり、ばね力が落ちる
上外側軟骨と下外側軟骨の結合部(スクロール領域)鼻先の位置を中央キーストーンと連結結合がゆるみ、鼻先が前下方へ移動
鼻翼基部靭帯(pyriform ligament)鼻翼を骨に固定ゆるんで鼻翼基部が下がる
depressor septi筋鼻先を下に引く筋(笑顔時)相対的に作用が強くなる
皮膚・軟部組織形を包む層皮膚が薄くなり、軟骨の形が透けて見えやすい

加齢による支持構造の低下プロセス

Wang 2022年(PMID 35994354)の中国人成人を対象としたCT定量研究(20〜35歳と65〜80歳の比較)や Rohrich 2008年の pyriform ligament 解剖研究などをふまえると、加齢により鼻の支持構造が段階的に低下する可能性が示唆されています[1]。臨床的には第1段階の鼻翼軟骨の支持力低下、第2段階の上外側軟骨と下外側軟骨のスクロール領域のゆるみ、第3段階の鼻翼基部靭帯の弛緩、というプロセスが説明されることが多く、30代後半から第1段階に該当する変化が目立ち始まる方が多く、40代半ばで第2段階、50代以降で第3段階に進むのが一般的な経過とされますが、年齢区分はあくまで目安で個人差が大きい点にご留意ください。皮膚自体も加齢で薄くなり弾力を失うため、軟骨の輪郭が透けて見えやすくなる点も、「垂れ鼻」の見え方をより目立たせる要因になります。

Rohrich 2008年の pyriform ligament(鼻翼基部靭帯)

Rohrich 2008年(PMID 18176231)の pyriform ligament(鼻翼基部靭帯)に関する解剖研究では、鼻翼基部周囲に従来知られていたよりも広い靭帯構造が存在し、これが鼻翼基部の位置を支える重要な支持構造のひとつであると示されています[2]。主要3つは鼻翼軟骨自体の強度・スクロール領域・鼻中隔軟骨の前方支持力、副次3つは鼻翼軟骨間靭帯・鼻翼軟骨と皮膚の付着・鼻翼基部の靭帯。「垂れ鼻」では、これらの主要・副次の支持構造が連鎖的にゆるんでいく。同じ加齢でも、骨成分の隆起である鷲鼻のハンプや、生まれつきの魔女鼻とは原因のレイヤーが異なるため、改善法も別系統です。いま広く支持されているメカニズムです。

自己診断|自分の鼻先は下垂している?

「垂れ鼻」は変化がゆっくり進むため、日常の鏡では気づきにくい変化です。でも、ご自宅でできる簡単なチェックポイントがあります。20代の頃の写真を見返して、いまの自分と並べてみるのが、もっとも分かりやすい方法です。

3つのセルフチェック

チェック方法判定ポイント下垂のサイン
(1) 横顔(プロフィール)写真鼻先と上唇の角度(鼻唇角/nasolabial angle)女性で90度未満なら下垂傾向(理想は95〜105度)
(2) 笑顔の自撮り笑った瞬間の鼻先の高さ無表情時より明らかに下がる場合は動的下垂
(3) 20代の写真との比較正面から見た鼻の長さ鼻翼基部と鼻先の距離が伸びている

鼻唇角の見方

鼻唇角(びしんかく)は、横顔を撮ったときに「上唇のラインと鼻先〜鼻柱のライン」が作る角度のこと。女性の場合は95〜105度が一般的に好ましいとされ、男性なら90〜95度。Sinno 2014年(PMID 25068320)の一般市民を対象とした選好調査では、女性で平均104.9°、男性で平均97.0°が最も美的に好まれる鼻唇角と報告されており、これより明らかに小さい(90度未満)と「下垂した鼻」「年齢を感じさせる印象」の評価が高くなる傾向が示されています[3]。スマホで横顔をまっすぐ撮り、画面上で角度を見るだけでも、自分の現状把握には十分役立ちます。

笑顔で「鼻先が下がる」現象

動画で自分の笑顔を見たときに、鼻先がわずかに下がるのに気づいた。こうした体験から美容医療を検討する方も少なくありません。これはdepressor septi筋(鼻中隔下制筋)という、鼻先を下に引く小さな筋肉の作用。20代でも持っている筋肉ですが、加齢で鼻翼軟骨の支持が落ちると、相対的にこの筋肉の引き下げ作用が目立つようになります。人中ボトックスと同じ部位への注射で、笑った時の鼻先下降をコントロールできるケースもあります。

「印象の変化」3つのパターン

同じ「垂れ鼻」でも、見え方にはパターンがあります。

このうち、下垂タイプは糸またはSEG、長く見えるタイプはSEGとdepressor septi切除の組み合わせ、笑った時だけ下がるタイプはボトックスが、実際の診療でよく選ばれる選択肢になります。次の章でくわしく見ていきます。

改善法|ボトックスから外科手術まで

「垂れ鼻」の改善法は、症状の段階・希望する持続期間・予算によって変わります。鼻を高くする方法でもふれていますが、軽度ならボトックスやヒアル、しっかり変えたいなら外科手術、という流れが一般的です。

垂れ鼻の改善法4段階 — ボトックス・糸・SEG・depressor septi切除の比較
改善法適応持続料金ダウンタイム
ボトックス(depressor septi)笑顔だけ下がる動的下垂3〜4か月1.5万~4万円ほぼなし
ヒアルロン酸(鼻先・人中)軽度の静的下垂6〜12か月5万~15万円1〜3日
糸(PDO/PCL/PLLA)軽度〜中等度の下垂6〜12か月8万~25万円3〜7日
鼻中隔延長(SEG)中等度〜重度の下垂長期維持60万~120万円2〜4週間
depressor septi切除笑顔時下降が強い・常時下垂長期維持15万~40万円5〜10日

(1) ボトックス(depressor septi筋への注射)

笑った瞬間に鼻先が下がる動的下垂タイプには、depressor septi筋(鼻中隔下制筋)へのボトックス注射が、もっとも侵襲の少ない選択肢になります。人中ボトックスと同じ場所への注射で、人中の左右に2〜4単位ずつ、計4〜8単位を打つのが一般的。Cigna 2013年(PMID 23698211)の40名のランダム化比較試験では、depressor septi nasi 筋へのボトックス注射群でコルメラ-上唇間距離(鼻先〜上唇の距離)の有意な増加が認められ、笑顔時の鼻先下降が改善することが報告されています[4]。料金は1.5万~4万円、ダウンタイムはほぼなし。「写真撮影のときだけ自然な笑顔の鼻にしたい」「正面の自撮りの悩みだけ解決したい」という方には、もっとも手軽で取り入れやすい選択肢です。

(2) ヒアルロン酸(鼻先・人中への注入)

静的下垂が軽度の方には、鼻先と人中の境目に少量のヒアルロン酸を注入することで、鼻先の位置を視覚的に持ち上げる方法があります。「鼻先を高くする」ためのヒアルではなく、「鼻先と人中の境目を埋めて、鼻が長く見える錯覚を打ち消す」のが目的。鼻ヒアルロン酸でもくわしく解説していますが、鼻周囲のヒアル注射は血管合併症(眼動脈閉塞による失明・皮膚壊死)リスクが高い部位。解剖を熟知した医師選びは、ほかの部位以上に慎重に進めたい部分です。料金は5万~15万円、持続6〜12か月、ダウンタイム1〜3日。

(3) 糸(PDO/PCL/PLLA)

軽度〜中等度の下垂には、吸収糸(PDOまたはPCL/PLLA)を鼻先から鼻柱、鼻中隔方向へ挿入して、鼻先を上方向に引き上げる方法があります。日本では「鼻スレッドリフト」「鼻糸リフト」などと呼ばれる施術。Kang 2020年(PMID 31517664)の韓国人を対象としたPDO糸+フィラー併用研究では、6か月時点でも整った形態が維持され、糸は特に鼻先を持ち上げて鼻柱・上唇角を整える用途で有用と報告されています[5]。持続は6〜12か月、料金8万~25万円、ダウンタイム3〜7日。糸リフト全般のガイドのページにもまとめています。

糸リフトの限界:鼻の糸リフトは、「下に引っ張られている力」と拮抗する形で支えるのが原理。下垂の程度が中等度を超えると、糸の力が負けて効果が短期間で消えてしまったり、糸が動いて変形を起こすリスクが上がります。中等度以上の下垂なら、最初からSEGを検討するほうが、長期的には費用を抑えられる傾向があります。

(4) 鼻中隔延長(SEG/Septal Extension Graft)

中等度〜重度の下垂には、鼻中隔軟骨を延長することで鼻先の位置を物理的に持ち上げる手術が、もっとも根本的な解決策になります。鼻中隔延長(SEG)でくわしく解説していますが、いくつかの固定法(Bridge type・Spreader type・Clocking type など)があり、患者さんの鼻中隔軟骨の量・形に応じて選択されます。SEG はアジア人短鼻・鼻先下垂に対する代表的な術式として広く用いられており、鼻先位置の物理的な引き上げが期待できます。長期維持的な効果で、料金は60万~120万円、ダウンタイム2〜4週間。修正手術の難易度が鼻整形のなかでも特に高いとされる手術なので、医師選びは慎重に検討するのが大切です。

(5) depressor septi筋の切除

笑った時の鼻先下降が強い方には、depressor septi筋を外科的に切除する方法もあります。鼻中隔と上唇のあいだの粘膜から筋肉を切離する手技で、ボトックスの「長期版」と捉えると分かりやすいかもしれません。一般的な鼻整形の臨床知見として、depressor septi 切除により笑った時の鼻先下降が軽減し、長期的な改善効果が期待されるとされています。料金は15万~40万円、ダウンタイム5〜10日。SEGと同時に行われることも多く、その場合はSEGで鼻先を物理的に持ち上げ、depressor septi切除で笑った時の下降も止める、というセット手術が一般的です。

どれを選べばいいか|年齢×重症度マトリクス

「垂れ鼻」の改善法は5つあるとお話ししましたが、現場で実際にどう振り分けられているか、年齢と重症度のマトリクスで整理してみます。

年齢/重症度軽度(笑った時だけ)軽度(常時)中等度重度
30代後半ボトックスヒアル or 糸糸 or SEGSEG
40代前半ボトックスSEGSEG+depressor切除
40代後半ボトックス+ヒアルSEG+depressor切除SEG+depressor切除
50代以降ボトックス+depressor切除SEG(小規模)SEG+depressor切除SEG+顔全体のリフト併用

「まず軽い方法から」の現実

「いきなり手術はちょっと…」という方によく提案されているのが、「ボトックス→糸→SEGの段階的アプローチ」。3〜4か月ごとにボトックスを継続して様子を見て、効果に満足するならそのまま、もっと根本的に変えたいと感じたら糸、それでも足りなければSEG、という流れです。鼻を高くする方法でもお話ししているのと同じ考え方で、「後戻りできる施術から試す」のが、後悔しにくい基本の流れになります。ヒアルロン酸は溶解剤で戻せますし、ボトックスは3〜4か月で自然に消えます。一方、SEGは戻せないので、時間をかけて慎重に決めるのがおすすめです。

「5年後の自分」で考える

もうひとつの判断軸は、「5年後にどうしたいか」。3〜4か月ごとにボトックスを打ち続ける生活が苦にならないなら、長期維持施術にこだわる理由はあまりありません。逆に、「もう毎回クリニックに通うのは面倒、一度で済ませたい」という方なら、最初からSEGを選ぶほうが、5年後・10年後のトータルコストも体への負担も少なく済みます。同じ60万円でも、SEGなら長期維持、ヒアルなら6〜12か月で消えて再注入が必要。長期で見たコスト感は、最初の決断前にいちど整理しておきたいポイントです。

リスクと修正のポイント

「垂れ鼻」改善には、各施術ごとに固有のリスクがあります。鼻先関連の手術に関する一般的な文献では、合併症として左右非対称・鼻孔閉塞・鼻先の硬さ・知覚異常・修正手術の必要性が代表的に挙げられています。

施術主なリスク頻度対応
ボトックス笑った時の不自然さ・効果不足低〜中頻度1〜2か月で消失・追加注入
ヒアル血管閉塞・チンダル現象低〜まれヒアルロニダーゼで溶解
糸の移動・触れて分かる・効果短期中頻度糸の除去・追加施術
SEG左右差・鼻先の硬さ・修正手術低〜中頻度修正手術(高難度)
depressor切除笑った時の不自然さ・上唇の動き低下低頻度経過観察(多くは数か月で改善)

糸の「触れて分かる」問題

糸リフトでよく訴えられるのが、「指で鼻先を触ると、糸の輪郭が分かる」という違和感。皮膚が薄い方に出やすく、Kang 2020年の研究でも、皮膚が薄い症例で糸の輪郭が触れて分かるケースが一定割合で報告されています[5]。多くは3〜6か月で目立たなくなりますが、気になる場合は糸の除去で対応します。この問題を避けるには、事前に皮膚の厚みをチェックしてもらい、薄い部位には糸を入れない術式の組み立てが鍵になります。

SEGの修正困難性

SEGは鼻整形のなかでも修正が最も難しい手術のひとつ。一度入れた軟骨を取り出すと、鼻先を支える構造そのものが失われてしまうため、修正には自家肋軟骨など別部位からの新たな軟骨採取が必要になることが多くなります。料金も初回の1.5〜2倍。SEGを検討する際は、修正保証の有無・医師の症例数・術後の長期フォロー体制を、丁寧に確認しておくのが安心につながります。安全性ガイドに、医師選びで見ておきたい項目をまとめています。

ヒアルロン酸の血管リスク:鼻周囲のヒアル注射は、背鼻動脈(dorsal nasal artery)・滑車上動脈(supratrochlear artery)が眼動脈と吻合している解剖学的な特徴から、注入したヒアルが血管に逆行し失明・皮膚壊死を引き起こすリスクが、鼻整形のなかでもとくに高い部位です。鼻ヒアルロン酸でくわしく解説していますが、重篤合併症の発生率自体は低い水準と報告されています。とはいえゼロではなく、鼻先のヒアル注入は、ほかの部位以上に医師の解剖知識と経験が鍵を握ります。

料金相場と5年コスト比較

料金表示について:以下の料金は税込の相場目安です。実際の料金はクリニックによって異なり、麻酔代・術後検診料・修正費用が別途発生する場合があります。

施術1回料金5年累計コスト備考
ボトックス(年3回)1.5万~4万円22.5万円〜60万円3〜4か月ごとの継続が必要
ヒアル(年1回)5万~15万円25万円〜75万円6〜12か月ごとの再注入
糸(年1〜2回)8万~25万円40万円〜125万円効果が短く回数が必要
SEG(1回で長期維持)60万~120万円60万~120万円修正発生時は1.5〜2倍
SEG+depressor切除75万円〜160万円75万円〜160万円セット施術として提示される場合あり

「軽い施術」のコストは積み重なる

表のとおり、ヒアルや糸を毎年続けると、5年でSEG 1回分を超えるケースがほとんど。「いきなり手術は怖いから」とヒアルや糸を選んだものの、3年・5年と続けるうちにSEGより高くついた、という方も少なくありません。「いま試して、満足できるなら戻せる」という後戻りできるメリットと引き換えに、長期コストは増していく。これがヒアル・糸の仕組み上の特徴です。

料金が極端に低い場合は内訳の確認を

SEGで30万円以下の表示を見かけたら、その価格に何が含まれているかを必ず確認しておきましょう。鼻中隔軟骨の採取・移植・固定。どれも医師の経験と時間がかかる工程です。表示と総額の差が大きいケースもあるので、「料金+麻酔+抜糸+検診+修正保証」までを総額で確認しておけば、後で「思ってたより高くついた」と後悔しにくくなります。美容整形全体の費用感支払いガイドでも、料金内訳と支払い方法の選び方をまとめています。

他施術との併用|顔全体のバランス

「垂れ鼻」は加齢変化の一部なので、ほかの加齢サイン(ほうれい線・たるみ・目元のくぼみ)と一緒に出てくるケースが多いです。鼻先だけを変えても、ほかの部位とのバランスが取れていなければ、印象は思ったほど変わらないこともあります。

同時に気になる悩み垂れ鼻と併用したい施術順序の目安
ほうれい線ほうれい線ヒアル or 糸リフトほうれい線→鼻先
頬のたるみハイフ or 糸リフトハイフ→鼻先
目元のくぼみ涙袋ヒアル涙袋→鼻先
口元の老化人中ボトックス人中→鼻先(同時可)
全顔のリフトフェイスリフトフェイスリフト→鼻先
鼻筋のハンプも気になる鷲鼻の改善同時手術が一般的
鼻根が低くてのっぺり見える鼻根を上げる鼻先と同時施術可
鼻の穴が見えるのも気になるタイプ別治療原因タイプの判別から
鼻柱が下がって正面から目立つ鼻柱縮小SEG後の医原性も含む

「鼻だけ目立つ」を避ける

鼻先だけをしっかり変えてしまうと、「顔全体は40代なのに鼻だけ20代」という不自然なバランスになることがあります。これを避けるには、鼻整形の前にほうれい線・頬のたるみ・目元のくぼみを先にケアしておくのが、よくとられる順序。鼻整形全体での見え方を考えるなら、鼻だけの施術ではなく、顔全体のバランスを意識した順序がおすすめです。

術後のケア|結果を最大化する過ごし方

施術当日〜3日1週間1か月以降
ボトックスマッサージ・うつ伏せ避ける通常生活通常生活
ヒアル冷却・激しい運動避ける通常生活通常生活
大きく笑わない・口を開けないテーピング継続表情の動きに注意
SEGうつ伏せ・うがい避ける抜糸・通常生活テーピング3か月
depressor切除大きく笑わない・しゃべりすぎない抜糸通常生活

SEGの長期ケアは「テーピング3か月」

SEG手術後の最終仕上がりに大きく関わるのが、術後3か月のテーピング。鼻先と鼻翼基部を軽くテープで固定し、軟骨の位置安定をサポートするケアです。地味ですが、これを怠ると鼻先の位置がわずかにずれることもあります。忙しさで貼り忘れる日が増えると、せっかくのSEGの仕上がりが甘くなりやすいので注意したい部分です。3か月分のテープをまとめて用意しておいて、朝の洗顔後にそのまま貼る流れを習慣にしてしまうと、無理なく続けられます。カウンセリングガイドに術後ケアの質問例も載せています。

SEG後の「マッサージ」は逆効果

「鼻先を高くキープしたくてマッサージしている」という声も聞きますが、SEG後の鼻先マッサージは軟骨の位置をずらすリスクがあります。「マッサージで鼻が高くなる」「鼻先を尖らせる」といった情報は、鼻を高くする方法のページでもふれていますが、解剖学的な根拠が薄く、SEG後はとりわけ避けたい習慣です。鼻先のことは気にしつつも、できるだけ触らずに過ごす。これが、長期の仕上がりを守るもっとも基本的なポイントになります。

よくある質問(FAQ)

Q. 「垂れ鼻」と団子鼻はどう違いますか?
「垂れ鼻」は加齢で鼻翼軟骨や支持靭帯がゆるみ、鼻先が下垂する後天的な変化。生まれつき鼻先が丸い団子鼻とは原因が異なり、改善法も変わります。団子鼻は鼻翼軟骨の形状や皮膚・脂肪の厚みが原因で、20代から見られる体質的なもの。「垂れ鼻」は30代後半以降、加齢で初めて気になり始める変化です。「20代の写真と比べて鼻先が下がった」と感じるなら、垂れ鼻寄りの可能性が高いです。
Q. 30代でも「垂れ鼻」になりますか?
なります。Wang 2022年や Rohrich 2008年の解剖研究では加齢に伴う鼻翼軟骨や pyriform ligament を含む支持構造の変化が示されており、臨床的には30代後半から段階的に変化を感じる方が多いとされています。ただし、30代の場合は変化が軽度なので、ボトックスやヒアルなど侵襲の小さい施術で十分対応できるケースがほとんどです。「20代の写真と比べると鼻先が下がってきた」と感じたら、軽いケアから始めるタイミングかもしれません。
Q. ボトックスだけで効果ありますか?
「笑った時だけ鼻先が下がる」動的下垂タイプには、depressor septi筋へのボトックス注射だけでも十分な効果が得られます。Cigna 2013年のランダム化比較試験では、depressor septi nasi 筋へのボトックス注射でコルメラ-上唇間距離が有意に増加し、笑顔時の鼻先下降が改善することが報告されています。ただし、無表情のときも鼻先が下がっている静的下垂には、ボトックス単独では効果が限定的で、ヒアル・糸・SEGなど別の方法が必要になります。
Q. ヒアルロン酸で鼻先を上げられますか?
直接「鼻先を上げる」効果は限定的で、「鼻先と人中の境目を埋めて鼻が長く見える錯覚を打ち消す」のが本来の使い方です。ただし、鼻周囲のヒアル注射は血管合併症(失明・皮膚壊死)リスクが、ほかの部位に比べて高い場所。鼻ヒアルロン酸のページでもふれていますが、解剖を熟知した医師選びは慎重に進めるのが大切です。
Q. 糸リフトで鼻先を持ち上げる効果はどのくらい持ちますか?
Kang 2020年の韓国人を対象としたPDO糸+フィラー併用研究では、6か月時点でも整った形態が維持されると報告されています。持続は6〜12か月で、効果が消えたあとは再施術が必要。中等度以上の下垂には糸では支えきれず、最初からSEGを検討するほうが、結果的に費用を抑えられる場合もあります。
Q. SEGはどんな人に向いていますか?
中等度〜重度の下垂で、長期維持的な解決を希望される方に向いている手術です。鼻中隔延長(SEG)のページで解説していますが、アジア人の 鼻中隔延長術(SEG)は、鼻中隔軟骨や肋軟骨を支柱として鼻先を前下方に延長・回転させる術式で、鼻唇角の改善と鼻先位置の物理的な引き上げが期待できる方法として確立されています。ただし、鼻整形のなかでも修正がとくに難しい手術なので、医師の症例数・修正保証・術後の長期フォロー体制を、念入りに確認しておくと心強いです。
Q. depressor septi切除はSEGと一緒に受けないとダメですか?
単独でも受けられます。一般的な鼻整形の臨床知見として、depressor septi 切除のみでも笑顔時の鼻先下降が軽減するとされており、患者満足度も比較的高い傾向が示唆されています。SEGと同時に受けるのは、「鼻先を物理的に持ち上げ(SEG)、さらに笑った時の下降も止める(depressor切除)」のセット効果を狙う場合。常時下垂と笑った時の下降の両方が強い方に多い組み合わせです。
Q. 鼻の悩みは加齢で他にも出てきますか?
出てきます。鼻翼基部のたるみ(鼻翼下垂)、皮膚の薄さによる軟骨の透け、鼻翼周りの色素沈着・赤み、毛穴の目立ち。こうした変化が「垂れ鼻」と一緒に進むことも少なくありません。鼻先下垂の改善とあわせて、ピコレーザーダーマペンで皮膚の質感ケアも組み合わせると、鼻まわりの印象を整える効果が期待できます。
Q. 男性でも「垂れ鼻」になりますか?
なります。むしろ男性のほうが、鼻翼軟骨の加齢変化が早期に出る傾向があるとされています。男性向けの「垂れ鼻」改善は、ナチュラルな仕上がりを重視するケースが多く、SEGより depressor septi切除や軽度のボトックスを選ばれる方が多いです。男性の美容医療全般は男性の糸リフトのページもチェックしてみてください。
Q. 5年間のトータルコストで、結局どの施術が一番安いですか?
5年スパンで考えるなら、SEG 1回(60万~120万円、長期維持)が、ヒアル毎年継続(5年累計25万円〜75万円)や糸毎年継続(5年累計40万円〜125万円)よりも、最終的にコスト面で有利になるケースが多い、と言えそうです。ただし、SEGは修正が発生したら1.5〜2倍に上がりますし、医師選びを慎重にすることもコストに関わってきます。「後戻りできる軽い施術から試す」「いきなり長期効果のある術式で済ませる」、どちらにも一長一短があるので、自分の納得感と相談しながら決めていきましょう。
鼻整形 完全ガイド小鼻縮小鼻尖形成貴族手術隆鼻術鼻ヒアルロン酸貴族フィラー鼻中隔延長(SEG)団子鼻鼻を高くする方法人中ボトックス人中ボトックスの効果小鼻ボトックス糸リフト 完全ガイド男性の糸リフトハイフ 完全ガイドフェイスリフトほうれい線ヒアルの効果涙袋ヒアル唇ヒアルの効果ヒアルロン酸 完全ガイドピコレーザーダーマペン水光注射リジュラン美容整形の費用相場クリニックの選び方カウンセリングガイド安全性ガイド支払いガイド

参考文献(PubMed 収載論文)

  1. Wang D, Xiong S, Wu Y, Zeng N. “Aging of the Nose: A Quantitative Analysis of Nasal Soft Tissue and Bone on Computed Tomography.” Plast Reconstr Surg. 2022;150(5):993e-1000e. PMID 35994354
  2. Rohrich RJ, Hoxworth RE, Thornton JF, Pessa JE. “The pyriform ligament.” Plast Reconstr Surg. 2008;121(1):277-281. PMID 18176231
  3. Sinno HH, Markarian MK, Ibrahim AM, Lin SJ. “The ideal nasolabial angle in rhinoplasty: a preference analysis of the general population.” Plast Reconstr Surg. 2014;134(2):201-210. PMID 25068320
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  5. Kang SH, Moon SH, Kim HS. “Nonsurgical Rhinoplasty With Polydioxanone Threads and Fillers.” Dermatol Surg. 2020;46(5):664-670. PMID 31517664

本記事は上記の学術文献をもとに作成しており、医療情報の正確性を担保するため、すべて PubMed(米国国立医学図書館 NLM 運営の学術論文データベース)収載論文を出典としています。

鼻整形 ガイド (19 / 23)

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